夢の撮像素子?

前回、ローパスフィルターの存在がレンズ交換式デジタルカメラの「超えられない壁」だという話しをさせた頂いた。
しかし、現在既に発売されているレンズ交換式デジタルカメラの中には、ローパスフィルターの無い物があるのだ。
その代表的な二つを紹介する。
一つは、FOVEON X3センサーを使用した、SIGMAのデジタル一眼レフのSDシリーズ。
もう一つは、一般的なベイヤー配列のKodak製の撮像素子を使用したLeica M8及びM8.2だ。

SIGMAが採用するFOVEON X3はCMOSセンサーの一種ではあるが、一般的な赤・緑・青の各センサーが空間的に異なる位置に並んでいるベイヤー配列のものとは全く異なり、赤・緑・青がシリコンを透過する特性が異なることを利用して、素子の厚み方向に3層にセンサーを配置している。
この層ごとにセンサーを配置する方式は、フィルムカメラのフィルムと同じスタイルであり、同一位置に各色のセンサーがある為、偽色が発生しない。
そういった理由から、ローパスフィルターは元々必要無いという撮像素子なのである。
しかし、ダストプロテクターなる、ゴミの侵入を防ぐ装備はあっても、フィルターが無い為、撮像素子に付着したゴミを除去する機能がカメラ本体に無い。

Leicaの場合は、はっきり言って力技である。
画像のシャープネスを優先した結果、無理やりローパスフィルターをはずして、偽色の発生は、画像処理エンジンで気合で処理させているのだ。
その為、ローパスフィルターで処理するべき部分はなんとか誤魔化せたが、赤外線カットができず、レンズにUV/IRカットフィルターを装着し、尚且つカメラ本体のレンズ検出機能をUV/IRカットに対応させる事で凌ぐという、国産メーカーなら絶対リコールな、禁じ手で乗り切った。
しかも、古いレンズは、レンズ検出機能に対応しておらず、それを対応させる為に更に一苦労必要なのだ。
これが60万、70万するカメラかよっ!と突っ込みたくなるのだが、しかしながら禁じ手と力技で無理やりローパスフィルターをはずしただけあって、その画像のシャープさは他の追随を許さないレベルである。
高性能なMマウントレンズのレンズ性能を余すところ無く発揮させている感じだ。
正直、モノクロだけなら最強のカメラだと言える。
ただ、前述したとおり、撮像素子の技術的には、目新しい物は無く、FOVEONに比べれば論外の力技であり、Leicaだからこそ、なせる業だと言える。
日本のメーカーならこんな物は絶対に商品化しないだろう。

SIGMAのそれにしてもLeicaのそれにしても、根本的な問題が全て解決されているわけでは無い。
しかし、他のメーカーが成しえなかった事に果敢に挑戦し、それを商品化したという点は大いに評価するべきであろう。
いつの日か、このローパスフィルターや撮像素子に付着するゴミの問題、ベイヤー配列のセンサーによって生まれる偽色の問題や、フィルターによる感度の低下及び、ダイナミックレンジの低下を完璧に解決する技術が生まれる事をせつに願っている。
厳密に言えば、現状一般的なベイヤー配列の撮像素子では、以下の弱点がある。
事実上、光の2/3は使われずフィルターがあるお陰で、解像度は劣化してダイナミックレンジも狭くなる。
正に三重苦だ。
もの凄く簡単に言うと、ベイヤー配列の問題と言うのは人間でも細かい格子柄を見ると目がチカチカしするの同じ事と言った感じだ。

正直な話、もうベイヤー配列の従来の撮像素子には限界が来ていて、FOVEONのような根本的なブレークスルーが無い限り、これ以上の進歩は望めないところまで来ているのだ。
いくら連写が速くなり、撮像素子がでかくなり、高感度特性が向上し、画素数があがり、電池の持ちがよくなり、手ブレ補正機能が充実し、小型軽量化し、動画が撮れたとしても、所詮根本的なことは何の進歩もしていないと言うことだ。
70点の写真が何枚撮れようが100点の写真が撮れる可能性の無いカメラなんて、と考えると少し憂鬱な気持ちになる。

ともあれ、全く別のアプローチではあるのだが、コンパクトタイプのデジカメでAPS-CのサイズのFOVEON X3をのせているSIGMA DP1というカメラがある。
レンズ固定式のコンデジである為、そこまでゴミに神経質になる必要は無い。
そういう意味でDP1は、ベイヤー配列撮像素子が抱えるローパスフィルター等の問題の面では、FOVEON X3を使う事で、ほぼ完璧な回答を出した唯一のカメラではないだろうか。
若干ハードウェア的な作りこみが甘かったようで、レスポンスがものすごく悪いようなのだが、近いうちにDP2が発表予定なので、SIGMAのコンデジサイドからの挑戦にも期待したい。

本物の夢の撮像素子の登場はいつになるのだろうか。
また、FOVEON X3は本物の夢の撮像素子になれるのだろうか。

ただ、アマチュアの自分がこんな重箱の隅をつっつくような事をねちねち考えるよりも、今ある機材で撮影を楽しむ事の方が間違いなく有意義であると思う。

このままだと救いが無いので、次回はこの弱点を補う方法を。
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by tks-thekid | 2009-01-20 10:44 | 四方山話し
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