カメラを選ぶ際に最も重要な事は、そのカメラに何を求めるかと言うことになるだろう。
例えば、あの「決定的瞬間」で有名なアンリ・カルティエ・ブレッソンは、Leica M3に50mmのレンズがトレードマークだ。 彼を端的に表すなら「決定的瞬間」「ライカ」「モノクロ」だ。 彼は、シルバークロームボディのM3に「目立つ」という理由で黒いテープをベタベタ貼って使っていた。 そして、彼は、「曇り用がF5.6で1/125sec、晴れ用がF8で1/250sec」の凡そ二通りの絞りとシャッタースピードしか使わず、レンズも35mmと50mmの二本で主に50mm。 非常にシンプルなのだ。 下手をすると、上記だけの事であれば、30分説明すれば、何が撮れるかは別にして子供でもできてしまうだろう。 ただ、その後のプリント作業は困難を極めたようだ。 ブレッソンは撮影のみを行い、後の現像、プリントはプロのラボマンに頼んでいたらしい。 しかし、露出は固定で撮られているので、アンダーなネガやオーバーなネガが普通に量産されていたはず。 それを見事にプリントしていたラボマンの技術力は評価するべきだろう。 そんな彼の撮ったモノクロームの世界は、見る人を魅了し続ける。 そして、もう一つ重要なのが、彼は、世界的に有名な、報道写真家集団マグナムを代表する、写真家なのである。 方や、社会の教科書でもその写真がたびたび登場する「水俣」で皆さんもご存知であろうユージンスミスは、様々な焦点距離のレンズをつけたminlta SR-T101を7台も首からぶら下げて撮影を行っていたというエピソードは有名である。 また暗室作業への拘りも凄まじく、1枚の写真をプリントするのに1週間をかけ、100枚の焼き直しを行ったという逸話も残っている。 さらには凡そ、一般論としてのフォトジャーナリズムとはかけ離れた「漂白・重ね焼き・トリミング」を駆使した写真が彼の作品の特徴だ。 彼を端的に表すなら、「真っ暗闇のような黒とまっさらな白」「報道写真の中の演出」 今は、デジカメ全盛の時代であり、撮った写真をPC等で極力エディットしないのが善とされる。 しかしフィルムの時代、しかも報道写真でむしろそれを積極的にやり、「客観性」では無く「主観性」、「事実」では無く「真実」を伝えようとしたカメラマンであったと言える。 2人とも天才と呼ばれる写真家であるが、その撮影スタイルには、大きな隔たりがある。 しかし一見対照的である、2人のカメラマンの間にある共通点は、機材への拘りと、プリント、即ちアウトップの完成度への拘りだ。 その為、「道具」としてのみカメラを選んだ結果、それぞれのスタイルになったわけだ。 これは良くも悪くも、なんとも味気ないカメラ選びである。 ただ、この味気ない無骨さというか、その精神は、かなりかっこいい。 こんな人達に憧れている俺は、結果的に、この精神を自分のカメラ選びにも反映させているつもりだ。 カメラをただの「道具」だとして、その観点からのみ拘る、というスタイルである。 ただ、何度も言うが、とにかく味気ない。
by tks-thekid
| 2009-01-14 13:31
| E-300 14-54 2.8-3.5
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